世界には様々な伝統医学があり、人々の健康を支えてきました。その中で・中国医学(中医学ともいう)・アーユルヴェーダ(インド古典医学)・ユナニ医学(アラブ・イスラムの医学)が三大伝統医学と言われています。中でも、西アジアからインド、東南アジア、中国などの広い地域全般で行われている伝統医療を総称して「東洋医学」と呼んでいて、「中国医学」、「アーユルヴェーダ(インド古典医学)、「チベット医学」がその主流とされています。その中の中国医学が日本に渡って、日本の「漢方」となりました。
「漢方」というと狭い意味では漢方薬による治療法を指しますが、広くは湯液療法(漢方薬)、鍼灸、導引(按摩術)を含めた伝統医学の総称です。
鍼灸は、欧米など多くの国々で医療行為として認められており、現在では世界の100ケ国以上で鍼灸が取り入れられるようになりました。
1972年にはWHO(世界保健機構)が鍼灸を世界の伝統医学として認め、その後40種類以上の疾患を鍼灸の適応疾患として認めて発表しています。
自然と一体になる東洋医学
東洋医学には、「病気だと診断はつかなくても健康ではない病気になる前の状態、半健康状態=未病」という概念が昔からあり、健康と病気は段階的に連続しており、心と体は一体のものとして捉えてきました。病気は心を含めた身体のバランスが崩れているから起きる、そのバランスを正さない限りは、たとえ手術や薬で潰瘍を治したとしても、病気はまた別の場所にあらわれる「病気が移動する」と考えるのです。だから病気になる前に身体の状態を良くして免疫力を高めておく、というのが東洋医学のアプローチです。普段から、自分の体や心の声を良く聞いて、自然治癒力を発揮させておくことが大切なのです。高齢化や様々なストレスを抱え慢性病に悩む現代社会で、この東洋医学の「病気を予防する/未病を治す」という概念は、西洋医学にも持ち込まれるようになりました。
東洋医学のなかに含まれる中国医学では、人体の活動をつかさどる要素を「気」「血」「水」の3要素にあるとして、これがバランスをとっているときが健康であると考えています。「血」は血液を指し、「水」は血液以外の体液を表します。そして「気」とは自然治癒力と同じ事です。ですから「気」を高めておけば、「血」も「水」もとどこおりなく流れて病気にかからず、「気」を弱くしていると病気にかかる、ということです。
「病は気から」とはここから来ています。
擦り傷や切り傷がいつの間にか治っていくように、私たちはもともと、相当な自然治癒力を持っています。しかし、現代社会でストレスがたまったり、不安や怒りによって精神状態が不安定になってくると、「自ら秩序をつくりだす能力」が落ちていき、病気を患ったりします。例えば宇宙空間はきわめて秩序性の高い空間です。地球はいつも24時間で一回転し、365日で太陽のまわりをひとまわりします。そこで自分も、この大自然のもつ秩序性の中の一員である、という認識をすること、思い出すことが、自然治癒力を発揮することにつながっていくのだと思います。『何か体にいいことを1つ始めるよりも、悪い習慣を1つやめる方が10倍の効果がある』と、ある針灸師の先生がおっしゃっていました。何かで行き詰まったりストレスを感じたときには、いつでも自分の原点に戻れば一番大切なものに行き着き、それを基本に生きていけば余分なものは自然と排除されていくのかも知れませんね。