homeostasis(恒常性維持機能)って皆さんご存じですか。私たち人間は、病気の原因となるウイルスや細菌が感染したり、あるいはがん細胞が発生し多少の増殖をしても、常に体の環境を快適な一定した状態に維持する機構が備わっていて、生体環境を正常な状態に保とうとします。これは生体の恒常性の維持機構と呼ばれています。たとえば、血圧や血糖値は一定の範囲内に保たれ、気道の粘膜は一定の粘度の粘液で潤い、胃の中は胃酸により一定のPHに保たれています。それらの破綻した状態が病気であると言うことができます。それぞれの破綻は、例えば高血圧、糖尿病、感冒、胃炎(潰瘍)といった病気で表現されることになります。この生体の本質的なシステムともいえるこの恒常性の維持は、免疫系に内分泌系、精神神経系が一体となり担っています。また、一度この恒常性が破綻し、病気になった場合であっても、それは同様な機構によって修復されます。つまり、病気を自分自身で治癒に導く力を人間は持っているのです。車や時計などの機械の場合は、壊れてしまったら、そこに手を加えて修理しなくては永久に直ることはないのですが、しかし、人間の体は自己の力で治っていくのです。それゆえ、多くの病気が医療の力を借りなくても、自然に治るわけです。かぜをひいても、膀胱炎になっても多くの場合、医者にかからなくとも自然に治ることも多いのです。また、例えば、腕に傷をおった場合などは、その自己の治癒力により治る過程を経過を追って目の前でつぶさに観察することができます。つまり、健康の維持および病気の自然治癒はこれらの恒常性維持機構が担っているのです。免疫系、内分泌系、精神神経系は解剖学を基礎に作られてきた現代医学の元では、別々の系統として扱われてきたのですが、以前から、間脳、下垂体、副腎を軸としてこれらの3者はお互いに影響し、結びつくことは知られていました。最近の研究からわかったことで、神経細胞が分泌する神経伝達物質、内分泌細胞が分泌するホルモン、免疫細胞が分泌するサイトカイン( 血液中に含まれている免疫蛋白質の総称.インターフェロンなど.)はお互い共通したペプチド(小さい蛋白質分子)であり、その受容体も共通していることが明らかになっています。したがって、一見別々に独立したこれら3者は、実は別の系統ではなく、生体の恒常性維持機構として1つのシステムであるといえるということです。
昔から、病は気から、あるいは信頼できる名医に診てもらうとそれだけで病気が良くなるなどと言われてきました。これらは時に、非科学的な例、あるいはプラシーボ(偽薬)効果として研究の邪魔者としての扱いを受けてきました。しかし、近年の免疫学の観点からは、精神神経系の変化が免疫系や内分泌系にも変化を生じ生体の恒常性の修復、促進につながっていることははっきりしています。
特に人間の感覚は嗅覚が最初に発達し、心と強く結びついていきます。様々な香りが本能的に人間の生存に危険を感じさせたり、又、安心や幸福を感じさせたりするのは、悠久の昔から人間の深層心理に遺伝子として受け継がれてきたものです。
仏教などで描かれる天国はいい香りがしていて、花が咲き乱れ、心地のいい風と、しっとりとした時間が流れています。こんな時間を演出することが、人間の心身を天国にいるような状態に近づける為の、本能的な営みかもしれません。
ホメオスタシス理論
ヘルメットをつけて自転車に乗るときと、つけずに乗るときはどちらが安全かということをホメオスタシス理論で考えてみると、ヘルメットをつけているということで、こけたときの安心が運転を少々危険なものにする傾向にあります。しかしヘルメットをつけていないときには、倒れたときの不安が運転を少々慎重にする傾向があります。これらも無意識な恒常性の維持機能です。
この恒常性の維持機能を根本的に理解すると、大切なものは何かということが見えてきます。
そうです、本能的な感覚です。危険を察知する能力です。守りすぎる事による恒常性維持機能の鈍化です。最適なことは、その本能を維持しながら、ヘルメットを装着することです。
現在社会はとても便利になってきました、そして危険から守られています。住居等や環境もそうです。
それが、私たちの生体の一部となってしまっているのです。ヘルメットのない時代は髪の毛がヘルメットでした。髪の毛のない人は頭蓋骨です。自ずから、危険を察知する能力や、バランス感覚は失われません。いつも危険があると考えること、見失わないことが、私たちのホメオスタシスを維持する大切な意識です。
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