気持ちの良い気候なのに、やっかいなものが花粉症。現在日本では、ここ10年間での増加傾向は著しく、今後も増え続けると予想されています。なぜここまで、花粉症は増えているのでしょうか?
初めの花粉症はイギリス
近年、爆発的に増加し、現代病の代表とも言われる花粉症。その花粉症は、日本では春先に飛散するスギ・ヒノキを代表に、年間を通して様々な植物に対するアレルギー反応が話題となっています。そんな花粉症問題、他の国々でも発症しているのでしょうか?実は、調べてみると、世界三大花粉症といわれる代表的な花粉症があるようです。
まず1つめは、ヨーロッパの『イネ科花粉症』です。これは世界で最初に発見された花粉症で、今から約180年前のイギリスで、農夫が干し草を扱っているときに突然、くしゃみ、鼻水、眼の充血、ときには喘息のような症状を起こす人が出てきました。しかし当時は、花粉のアレルギーという考えはなく「枯れた草に触ったため」と思われ「枯草熱」と名づけられていました。そして後の1873年、本当の原因がイネ科の牧草の花粉であると立証されたのです。イギリスでは、このイネ科花粉症は、現在も人々を悩ませています。その主は、ヨーロッパ各地・家畜の肥料として欠かせないイネ科の牧草 カモガヤやオオアワガエリなどイネ科の草が原因となっています。日本でも、カモガヤの花粉症は4〜6月頃 に北海道と東北地方で見られます。これはお米をとるために作っているイネではなく、牧草や芝草 として日本へ導入された外来種が原因となっています。外来種は在来種に比べ、花粉飛散が多く、空き地や道ばたでも繁殖して広がっていきました。
2つめは、主に北アメリカの『ブタクサ花粉症』です。これは1900年頃から注目され始め、 アメリカやカナダでは、夏から秋のブタクサ花粉症で大勢の人が悩まされています。キク科の雑草で、河原や牧草地、道端などに繁殖します。日本でも、ブタクサ花粉症は9〜10月頃 見られます。ブタクサは「マッカーサーの置き土産」と呼ばれ、帰化植物として日本に入ってきた当初から多くの人が悩まされました。しかし土地開発による 空き地の激減 などで、花粉飛散数の増加もほとんどなくなり、発症率も低くなっているようです。
3つめは、日本の『 スギ花粉症』です。主に日本固有の植物・スギの花粉を原因とする、つまり 日本にしかない スギ花粉症も、やっぱり世界三大花粉症に入っていました。
1〜4月にかけて 猛威をふるい、日本における花粉症の 約8 割 の原因が「スギ」といわれています。
スギ・ヒノキ花粉が多い理由
日本特有の杉の花粉が多く飛散している原因は、戦後の高度成長期と大きな関わりがあったようです。大平洋戦争で荒れた日本の山の大部分は、林野庁奨励のもとにスギの植林が行われ、戦後の復興に大きく貢献をしました。さらに1960年以降、木材としての人気が高まったヒノキの植林も進みました。このように木材として利用するために大量に植林されたスギやヒノキですが、段々と安い輸入木材におされ、日本のスギ・ヒノキの人気が落ちてしまったことにより、林業に携わる貴重な人材が次々と減少し、スギ林の管理が行われずに枝が伸び放題、放置状態となっていきました。そんなスギの木は樹齢30〜40年ほどで成熟するので、戦後に植林されたほとんどがここ数十年で成熟期をむかえて大量の花粉を飛ばしているというわけです。同じくヒノキ花粉も、数倍に増えています。今、林野庁では樹齢30〜40年のものから優先的に伐採していますが、思うように進んでいないのが現状だそうです。
また、ただでさえ管理されずに茂っているスギやヒノキが大量にある上に、都会では当たり前となっている舗装道路も、花粉が大量に飛び交う一因となっています。もし花粉が湿ってデコボコした土に落ちれば、再び舞い上がりにくいですが、アスファルトでは、一度落下しても 風や上昇気流でまた舞い上がってしまいます 。すると空気中に飛んでいる時間が長くなり、その分人に吸われる機会も多くなるのは当然のことといえるでしょう。
都会の方が花粉症になりやすい!?
スギの花粉は、都会よりも山の中のほうが大量に飛んでいるはずなのに、ビルの立ち並ぶ街中での方が発症率が高いのだそうです。これは、車の排気ガスなどの空気中の化学物質と花粉がなんらかの反応を起こし、そのことが花粉症の発症に影響しているのではないかといわれています。また、人間の鼻の粘膜や肺が、車の排気ガス等の化学物質で痛めつけられており、そこに花粉のアレルゲンが入り込むと、花粉症を起こすのに関わっているIgE抗体が体内で効率よくできてしまうことが確認されています。大気汚染は、花粉症発症に大変大きな影響を及ぼしているのです。
また、アレルギー症状は自律神経と深くかかわっているため、ストレスや疲労で自律神経の調節が乱れ体の免疫力が低下すると、花粉症の症状も出やすくなります。この免疫低下には、食生活も大きく関わってきます。戦後、日本人の食生活がどんどん欧米化し、動物性脂肪やたんぱく質中心の食生活へと変化してきました。肉などの たんぱく質 の摂取が多くなると、異物への反応が過敏になる=アレルギー体質になりやすいと考えられています。また、インスタントやスナック類、ファーストフード、保存食などが増え、 食品添加物 を小さい頃から摂り続けていることも、こうした体質変化の原因としてあげられています。
花粉症改善には、鼻呼吸を!
花粉症の発症の一因が大気汚染であることは前回のマガジンのとおりですが、実は、口呼吸も大変大きな原因となっていることが最近の研究で分かってきました。
スギ花粉のタンパク質、大気汚染、口呼吸の条件が複合することで、花粉症は起きるというわけです。
本来、哺乳類の呼吸器官は鼻で、口は食べ物の入り口です。しかし、しゃべることによって、鼻が繋がっている口でも呼吸することができるようになりました。
この口呼吸が無意識のうちに常習化しているのが、一番の問題なのです。
鼻から吸い込まれた空気は、鼻腔を通る間に空気中に漂う細菌やウイルスなどの有害物質が除去され適度に加湿加温されて、酸素が吸収されやすいかたちとなり、肺に送られます。
しかし、口で空気を吸った場合、冷えて乾燥した空気が、いきなり扁桃組織の温度を下げます。
すると、喉に存在する酸素を好む好気性菌が、扁桃の細胞から白血球に取り込まれて体じゅうにばらまかれ、さまざまな器官や組織の細胞を汚染して細胞内感染症を発症します。
その結果、感染した細胞内のミトコンドリアが働かなくなります。
そこにスギ花粉と大気汚染物質の複合体が抗原となってできる抗体との反応、すなわちアレルギー反応が、細胞内で炎症症状として起こる、これが花粉症なのです。実は、このミトコンドリアこそ、花粉症のような急性免疫病において最も重きを置くべき存在なのです。
人間の身体は、約60兆個の細胞から構成されています。
皮膚は数時間、骨なら数カ月で新しい細胞がつくり出され、常に新しい組織ができあがっているのです。
このように健康な身体を維持するための細胞の更新を「新陳代謝(リモデリング)」 といいます。
そして、その細胞の中で呼吸をし、エネルギーを製造しているのが、このミトコンドリアなのです。
つまり、「ミトコンドリア」が健常であることによって、 それが花粉症などの過剰反応を和らげる唯一の方法となるのです。
全ての急性免疫病において、この定義が当てはまります。
花粉症を和らげるには、つまり、口呼吸を鼻呼吸に矯正し、ミトコンドリアの働きを活性化しておくことです。
そうすると、花粉症のシーズンも、昼間の内はいくら外に出ていても,ミトコンドリアが活発ですので、ほとんど発症しません。家に帰ってから、衣服の花粉を落として、シャワーに入り、鼻うがいと、目洗いをしておくと、副交感神経が優位になりミトコンドリアの活動も沈静化する夜も、不思議なほど症状が出ません。
花粉症のシーズンが終わったら、来年に向けて、口呼吸の練習をお勧めします。日中の運動も大事です。ミトコンドリアを健全に強くしておくことが、花粉症の症状を軽減するひとつの方法です。
食生活と花粉症
食事対策は速効で花粉症に効果があるわけではないかもしれませんが、意識的に食について考えると自然と栄養バランスがとれた規則的な食生活になり、それに伴い免疫のバランスを保つことにも繋がっていきます。食品添加物が多く含まれているインスタント食品などは極力避け、甘いもの、冷たいもの、刺激物(辛いもの、アルコール、タバコ)なども控えたほうがよいとされています。また、肉・卵・乳製品なども摂取しすぎると花粉症になる確率が高くなると言われています。免疫を活発にさせ、花粉症に効果がある食事でお勧めのものは、身体が温まるような食事です。つまり、穀類や、豆類、芋類、生姜、ハチミツなど、昔から日本人が摂取してきたような食材を主に摂取するのがいいようです。
また、お茶でも最近は多数の茶葉が出回り、気軽に珍しい植物の抽出物が摂取できるようになり、その中でも花粉のアレルギー症状を緩和するようなお茶を紹介しましょう。
●甜茶(てんちゃ)
甜茶とは中国の甘いお茶で、木の葉から作られた甘いお茶の総称だそうです。
『甜』は『舌が甘い』と書きますから、その独特の味は名前にも表れています。古くからある薬草茶のひとつである甜茶は、中国では多くの幸せを願うものとして飲用されてきたようです。効能によって植物の原料が違う甜茶の中で、花粉症に効果のある原料は、バラ科植物からできた甜茶で、抗アレルギー有効成分が含まれています。その主成分は、甜茶ポリフェノール、ルブソシド、各種アミノ酸、カリウム、カルシウム、亜鉛、鉄などのミネラルが含まれており、その代表成分甜茶ポリフェノールが、アレルギーに有効な成分です。辛いアレルギーの症状を引き起こす原因であるヒスタミンの分泌を抑制する作用と、炎症を抑える作用があります。また甜茶は、解熱や咳止め効果もあるので、風邪の諸症状を抑えるために、古くから飲まれてきました。体を温めてくれて、胃腸にも優しく、食後の消化のお手伝いもしてくれるのです。
●グァバ茶(シジュウム茶)
グァバはシジュウムの和名で、シジュウムとはハーブとしての名前です。昔から漢方薬として用いられており、薬としての名前は『蕃石榴(バンザクロ、またはバンセキリュウ)』と呼ばれています。温帯から熱帯にかけて分布し、葉も果実も乾燥してお茶として飲まれており、グァバの果実は、熟すとほんのり赤く薄い甘みがあります。葉と果実でそれぞれ含まれている成分や効能が異なります。葉の主要成分は、クエン酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、ギ酸、ビタミンA、ビタミンC、タンニン、脂肪油、精油、揮発油、樹油、ビタミンB群、インスリン様成分や芳香族化合物。果実の主要成分は、多量のカロチンやビタミンC、カリウム、カルシウム、リン、鉄分などです。グァバ茶に含まれるグァバ葉ポリフェノールという成分は、糖を分解してブドウ糖にする酵素の働きを抑制し、血糖値上昇を抑え、糖尿病の予防に効果あると言われています。同じくポリフェノールの一種であるタンニンには、体の中の活性酸素を取り除いて血液をサラサラにする効果があります。そして、グァバ茶はアレルギー反応の原因であるヒスタミンやロイコトルエンを抑える効能もありますので、花粉症などのアレルギーに対する効果があると言われています。この花粉症を抑える成分は、葉を使ったグァバ茶に比べ、実を用いた方がより花粉症に対する効果が高くなっているそうです。その他の効能としては、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、疲労回復、美肌効果、口内炎、高血圧、免疫力強化、抗酸化作用があるとされています。
●シソ茶
シソの葉は漢方生薬のひとつです。シソ(蘇葉)の名は葉が紫色で、香気がさわやかで食欲がすすみ、人を蘇らせることからつけられました。シソには防腐作用があり、さしみなど料理についているシソは、食中毒や魚毒を中和するのに有効です。また、シソの葉には気分を壮快にする働きがあるため、ストレスや初期の風邪には、煎じて飲むと効果があります。入浴剤として葉を袋に入れて湯船に入れると、体が暖まり、冷え性、肩こり、神経痛、リウマチによいとされています。最近では、花粉症を防ぐハーブとしてよく利用されるようになってきました。シソの葉や種に含まれるポリフェノールが、鼻づまりの原因となるロイコトリエンや、くしゃみや鼻水、目のかゆみを引き起こすヒスタミンの生成を抑えてくれるからです。さらに、シソには、体内に入るとEPAという物質に変化するαーリノレン酸が豊富に含まれています。EPAとは、免疫系を正常にする働きや、かゆみのもとにもなる炎症物質の生成を防ぐ作用があります。これらの効果は、青ジソよりも赤ジソの方が、また葉よりも種子エキスの方が高い傾向にあるそうです。
花粉症の症状を緩和する製油
下記に花粉症の症状緩和に効果があるオイルをご紹介したいと思います。
【ユーカリ】
抗菌性が強くて、鼻とかの粘膜の炎症を抑えてくれる効果があります。ユーカリには1.8シネオールという炎症を抑えてくれる成分が多く含まれています。ユーカリは感染症の治療に使われていたという話もあるように、現在ではのど飴や軟膏などの医薬品にも含まれているようです。
【ティートリー】
強い殺菌効果があり、免疫力を刺激してくれる作用が期待できるために花粉症の対策にもなると思います。香りはすっきりしているために使いやすいですが、苦手な人もいると思いますので試してみてから使ってみることをお勧めします。
日本を始め、世界の主要国でも問題になっている花粉症。大気汚染をはじめ化学物質が蔓延している現代社会に生きていれば、免疫バランスが崩れやすくなって当然のことといえます。アレルギーの原因は「免疫系」の乱れです。外から侵入しようとしたり、身体の中で生じた「異物」から「自己」を守ろうとする防衛システムが過剰に反応し「自己」そのものを誤って攻撃することでアレルギーは起こります。花粉やハウスダストなど原因となる異物はさまざま。しかし、免疫系が「異物」と「自己」をきちんと見分けられない限り、アレルギー体質は改善されません。だからこそ、より感受性をとぎすまして自分自身の心と体のバランスを見つめるように心がけることが大切なのでしょう。疲労をためない規則正しい生活、バランスのとれた食事、体を暖める、人間の自然な鼻呼吸、免疫系の働きを良くしてくれる植物を活用するなど、薬に頼らずに自分自身の免疫力を活発にしていくことが一番の花粉症対策です。
10年以上花粉症に悩まされている人も、鼻が詰まっているときには生理食塩水での鼻洗浄をしたり、家にいるときにもマスクをして多少の口呼吸をしても暖かい湿った酸素を体内に取り入れるようにしたり、時々鼻で意識的に深呼吸をしてみたりと、鼻呼吸を意識することと、夜は番茶にすりおろした生姜をいれた生姜茶を飲んで寝たり、昼間に適度な運動を心がけたりするようにしていつも体を暖めることを心がけ、体内のミトコンドリアを活発にするよう取り組み始めました。
また、免疫改善の手助けをしてくれる身近な植物も大活躍させています。特にエキナセアブレンドティーは、ちょっと寒気がしたり倦怠感を感じたときに飲むと、本当に体に良いものが染み渡っていくような感覚がして風邪のひき初めが回復していき、冬から春にかけてのこの時期、人気の高いお茶です。